2008-08-20

葉桜の季節に君を想うということ レビュー

ポスト @ 8:01:05 | 小説

 前回の小説レビューに続き、今回は「評判がいいものの、個人的にはイマイチだった作品」を紹介していく。

 その第一弾は「葉桜の季節に君を想うということ」。歌野晶午作のこの作品は、数々の賞を獲得し、評価も非常に高い。

<あらすじ>
 「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵の主人公は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たす―。

<感想>
 あらすじの最後に「二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本」と書いてある通り、この作品にはある種の仕掛けがほどこされている。じっくり腰を据えて読まないと、そのトリックには気がつかないだろう。ただ、巧妙に隠しつつも、ところどころにヒントが散りばめられており、この手のトリックとしては非常にフェアな手法をとっているといえる。  さて、肝心の内容のほうだが、読み終わった直後の感想としては「ふーん、なるほどねぇ」といった感じであった。確かにラストのネタバレ部分では驚かされたし、話自体もキレイにまとめた印象はある。ただ、真相が明らかになった瞬間のカタルシスというものが、イマイチ物足りないのである。その原因と考えられるものはいくつかあるが、最大の原因は「殺人事件そのものが起きていない」という点にあるのではないだろうか。通常のミステリ小説では、最初に殺人事件が起こり、アリバイや物的証拠など、様々な方面から容疑者を絞り込んでいく、というような展開になるが、この話にはそういったものは一切なく、主人公が探偵まがいの行動で、悪徳霊感商法会社の悪事を暴く、ということに終始する。つまり、推理小説で最も重要な「まさかこの人物が犯人だったとは!」というような衝撃が欠落しているのである。無論、これがなければ駄作だ、というつもりはない。だが、このような重要ポイントを放棄するのであれば、それ以上にインパクトのある展開を用意しておかねばならないだろう。そして、この作品には、そこまでのインパクトのあるラストはなかった。

 ただ、ミステリ小説ではなく、普通の物語として見るなら、この作品は非常に完成度の高いものであると言えるだろう(どちらかと言えば、男性よりも女性向けな内容であるとは思うが)。オススメ、とまではいかないが、読んで損をするということもないはず。ミステリ小説に驚きを求めない人なら、文句なく推奨できる作品である。

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